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本学への寄付

葉緑体核様体をコンパクトに折りたたむ「DNAクリップ」の発見―ミトコンドリアとも共通する普遍的なしくみの解明―

 

 大学院創成科学研究科(理学系学域)の三角修己准教授、宮川勇名誉教授、京都大学大学院理学研究科の田草川真理研究員(元本学学術研究員)らを含む、京都大学、茨城大学、立命館大学の研究グループは、緑藻クラミドモナスの葉緑体核様体の解析から、葉緑体DNAを折りたたむタンパク質「DNAクリップ」を発見しました。
 本成果は、令和3年5月11日(火)に米国の国際学術誌「Proceedings of National Academy of Sciences, USA」にオンライン掲載されました。

 

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概要

 生物の遺伝情報を担うDNAは、細胞にきちんと収まるように、生体内で小さく折りたたまれなければなりません。たとえば細胞核DNAは多様なヒストンによって折りたたまれて染色体を構築し、ミトコンドリアDNAはTFAM/Abf2pと呼ばれるタンパク質によって折りたたまれて「核様体」を形成します。一方、植物などで光合成を担う重要な細胞内小器官である葉緑体にも独自のDNAが存在しますが、これら葉緑体DNAが折りたたまれて「葉緑体核様体」を形成する仕組みは分かっていませんでした。今回、大学院創成科学研究科(理学系学域)の三角修己准教授、宮川勇名誉教授、京都大学大学院理学研究科の田草川真理研究員(元本学学術研究員)らを含む、京都大学、茨城大学、立命館大学の研究グループは緑藻クラミドモナスの葉緑体核様体の解析から、葉緑体DNAを折りたたむタンパク質「DNAクリップ」を発見しました。
 このタンパク質は、2つのDNA結合部位(High mobility group (HMG) box)を持っており、その構造はミトコンドリアのTFAM/Abf2pとそっくりでした。HMG box domain protein(HBD)1と名付けたこのタンパク質について、ゲノム編集によって遺伝子を破壊すると、葉緑体核様体は解けて小さくなりました。さらにHBD1タンパク質のDNAへの結合様式を、高速原子間力顕微鏡とDNAオリガミをもちいて観察してみると、HBD1がDNAを折り曲げたり(bending)、2本のDNA鎖を架橋(bridging)したりする様子が捉えられました。これらの結果から、HBD1は二つのDNA結合領域を用いて、DNAを折り曲げたり架橋したりする「DNAクリップ」として、葉緑体DNAを折りたたみ、葉緑体核様体の構築に貢献していることが示されました。

 

研究プロジェクトについて

 本研究は日本学術振興会科学研究費助成事業(課題:17H05840, 18H02460, 18K19337, 18K14733, 19H04861, 21H02504)、公益財団法人 三菱財団自然科学研究特別助成(課題:201910032)、公益財団法人 大隅基礎科学創成財団(課題:203200500032)、日本科学協会 笹川科学研究助成(課題:29-440)、奈良女子大学大和?紀伊半島学研究所一般共同研究(課題:9)の支援を受けました。

 

論文情報

  • タイトル:HBD1 protein with a tandem repeat of two HMG box domains is a DNA clip to organize chloroplast nucleoids in Chlamydomonas reinhardtii.(HMG boxドメインを直列に2つ持つHBD1タンパク質はクラミドモナスの葉緑体核様体を形作るDNAクリップである)
  • 著者:Mari Takusagawa, Yusuke Kobayashi, Yoichiro Fukao, Kumi Hidaka, Masayuki Endo, Hiroshi Sugiyama, Takashi Hamaji, Yoshinobu Kato, Isamu Miyakawa, Osami Misumi, Toshiharu Shikanai, Yoshiki Nishimura
  • 掲載誌:Proceedings of National Academy of Sciences, USA.
  • DOI:10.1073/pnas.2021053118
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