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本学への寄付

山口県で慢性腎臓病(CKD)対策として新認定制度を開始~かかりつけ医と専門医の連携強化で重症化予防を目指す「心腎代謝診療医」~

 

概要

 山口県は県民の健康課題である慢性腎臓病(CKD)対策の新たな包括的戦略を発表しました。この取り組みの中核となるのが、かかりつけ医と専門医療機関の連携を強化し、早期発見?早期治療を促進するための「山口県心腎代謝(CKM)診療医」制度です。この制度により、地域医療の連携を強化し、健診に対する県民の意識を高めることで、CKDの重症化を防ぎ、県民一人ひとりの健康寿命の延伸を目指します。
 188博金宝,188博金宝网页からは山口県慢性腎臓病(CKD)対策専門会議(会長:188博金宝,188博金宝网页大学院医学系研究科器官病態内科学講座 佐野元昭教授)の構成メンバーとして器官病態内科学講座 澁谷正樹講師(循環器内科、腎臓?高血圧内科)、泌尿器科学講座 白石晃司教授、病態制御内科学講座 太田康晴教授(糖尿病?内分泌内科)が参加し、この取り組みを全面的に支援して参ります。

CKDについて

 CKDとは、腎臓の働き(GFR)が健康な人の60%未満に低下する(GFRが60m?/分/1.73㎡未満)、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を言います。放置すると腎臓の働きが低下し、透析や腎移植を必要とします。さらにCKDでは、透析や腎移植を必要とする以前に、心筋梗塞や脳卒中といった生命に直結するような心血管疾患を発症する危険性が高いことが問題です。腎臓を守ることが、心臓や脳を守ることにもつながります。日本腎臓学会による最新の推計では、成人の5人に1人がCKDに該当するとされています。(図1)

図1

山口県の現状と課題

CKDの現状

 山口県では、CKDに関して特に深刻な課題に直面しています。山口県の腎不全による年齢調整死亡率は、男女ともに全国平均を上回っています。令和5年には、腎不全は県内の死因第8位であり、その死亡率は全国平均より高い状況です。また、新たに透析を開始する患者さんの数は全国的には減少傾向となっていますが、山口県では横ばいの状況です。原因疾患として最も多いのは糖尿病性腎症で、約4割を占めています。高血圧症を基礎とする腎硬化症がそれに続き、この2つの疾患で全体の約2/3を占めます。山口県ではこれら2疾患のリスク要因である糖尿病や高血圧、脂質異常症などの疾患の治療状況も全国平均より低調な状況にあります。(図2)

図2

専門医の不足

 山口県内の腎臓専門医の数は33人と対人口比で全国平均の約半分にとどまっており、専門医のみで多くのCKD患者さんを診療することは困難な状況です。

低い認知度と受診率

 CKDという病名を知っている県民の割合は約3割と低く、認知度を向上させる必要があります。また、CKDは、初期段階では自覚症状がほとんどないため「健診で早期に発見することが望ましいのですが、山口県における特定健診の受診率は51.2%(令和4年度)と全国42位でした。

新たな連携体制「心腎代謝診療医」

 こうした状況を打開するため、県は令和7年より「山口県慢性腎臓病(CKD)対策専門会議」を設置し、地域全体でCKD対策を進めるための医療連携体制として「心腎代謝診療医」制度を構築しました。心腎代謝診療医とは、腎臓のみならず心臓や脳を守る視点を持ち、CKDの要因となる疾病の包括的な管理に関する所定の研修を修了した、地域のかかりつけ医や関連分野の専門医を山口県が認定する制度です。(図3)

図3:認定までの流れ

制度の仕組み

 この制度では、患者さんが適切な医療を受けられるよう、明確な連携フローを構築します。(図4)

かかりつけ医による健診

 県民の皆さんに1年に1回かかりつけ医(もしくは職場)で健診を受けることをお勧めします。

診療医への紹介

 健診でタンパク尿や腎機能(eGFR)の低下など、CKDの疑いがある所見が見つかった場合、かかりつけ医は地域の心腎代謝診療医に患者さんを紹介します。

包括的な疾患管理

 心腎代謝診療医は、患者さんの血圧や血糖の管理、患者教育、適切な薬剤選択などを含む包括的な治療計画を立て、かかりつけ医と密に連携します。各種メディカルスタッフとも協力します。糖尿病や高血圧など腎臓以外の疾病が原因であると考えられる場合は心腎代謝診療医が中心となって治療を進めて行きます。

専門医への紹介

 より専門的な治療が必要な病態(腎臓そのものに起因する病気:慢性糸球体腎炎など)や、病状の進行が急速な場合には、診療医が適切なタイミングで腎臓専門医へ紹介します。


図4

 この段階的なアプローチにより、心腎代謝診療医が地域で早期の管理を担うことでCKDの重症化を効果的に予防し、腎臓専門医は重症例や難治例の治療に注力することが可能となります。

普及啓発と今後の展開

 心腎代謝診療医制度は令和7年9月以降順次開始され、診療医のリストは県のホームページで公開される予定です。これにより、県民や医療関係者が必要な情報に容易にアクセスできるようになります。
 慢性腎臓病(CKD) に関する普及活動では、尿検査の重要性の再認識が大きなテーマとして挙げられています(図5)。尿検査は非侵襲的で簡便な方法であり、尿タンパクや血尿の検出は、腎機能低下や、それに伴う全身の健康への影響を防ぐ重要な手段となります。また、検尿は、腎疾患に限定される検査ではなく、「食塩摂取」という普遍的な健康リスク因子を客観的にモニタリングするツールとしても注目されています。日常的な健康診断や診療における検尿の活用が広がれば、多くの健康リスクを早期に発見するだけでなく、減塩指導の見える化を含めたより具体的な治療支援につながることが期待されます。

図5

 

お問い合わせ先

<制度に関すること>

山口県健康福祉部健康増進課健康づくり班
永井?佐々木
電話番号:083-933-2950
Eメール:kenkoudukuri@(アドレス@以下→pref.yamaguchi.lg.jp)

<CKDの診療に関すること>

188博金宝,188博金宝网页大学院医学系研究科器官病態内科学講座(腎臓?高血圧内科)
講師 澁谷正樹(しぶや まさき)
電話番号:0836-22-2244
Eメール:mshibuya@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

<報道に関すること>

188博金宝,188博金宝网页医学部総務課広報?国際係
電話番号:0836-22-2009
Eメール:me268@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp)

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